のんびりした島の暮らしの実態

2009/04/05
今年7月22日、今世紀最長の日蝕が見られます。世界で最も長く見られるのは、太平洋上で6分42秒。日本で最も長いのは、トカラ列島の一つ、悪石島の6分25秒だといいます。去年のニュースで、その日に向けて、天文マニアが押し寄せて大変なことになりはしないかと、島の人たちが戦々恐々としているという話を聞きました。そんな、トカラ列島について、シンプルに、なおかつ詳しく書かれたのが、この本です。日蝕の前にぜひ読んでおきたい一冊です。

「トカラ列島 絶海の島々の豊かな暮らし」(光文社新書 著・斎藤潤)


トカラ列島とは、屋久島と奄美大島の間、百数十キロに連なる7つの有人島と5つの無人島、合わせて12の島からなります。人口は7つの島で合計625人。日本唯一の純血黒毛和牛がいたり、日本で最もワイルドな温泉(船をチャーターして行かないと入れない)があったりと、ユニークさ満点です。こういう話を聞くと、行きたくてウズウズしてきます。

ただ、そこでの暮らしはというと、手つかずの自然が当たり前のようにあって、自給自足の生活。電気やガス、水道などのライフラインを確保するのも大変。のんびりとしているようで、実は自立するのが難しいという実態が描かれます。著者も指摘していますが、こういうところに来ると、生活の厳しさに直面して、生きるとはどういうことかをリアルに実感して、目から鱗がボロボロと落ちるでしょう。

2年前に屋久島に行ったときに島の人が言っていたのを思い出します。
「テレビ局のリポーターさんが、『島のお年寄りはみんな元気ですね!』っていうけど、あれ、当たり前なんだよね。だって元気じゃなかったら生きていけないんだもん。病気になったら、みんな本土に行かざるをえないんだよね」

歳をとって退職したら、暖かい島でのんびりと暮らしたい...そう漠然と考えがちですが、実はそれが大変な誤解の上に立っていることが、この本を読むとひしひしと伝わってきます。

そうそう、もう日蝕のときには入島制限がされていて、かなり難しいそうです。自然の厳しさに対するおそれがありながらも、一度は行ってみたくなる、ユニークな魅力がよく伝わりました。自分にはちょっと読みづらい文章だったけど。
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いま、経済はどうなっているのか?

2009/03/10
いったい、いま経済はどうなっているのか? 去年の秋から急ブレーキがかかったように経済が悪化したのはなぜか? この悪い状態は、今後どうなるのか? どうすれば状況は改善するのか? いま、経済をめぐる「?」が渦巻いています。誰もが、その「?」から座標軸を探して、自分の立ち回り方、身の振り方を定めたいと思っているはず。

そんな嵐の中での経済の現状がどうなっているか、大いなる示唆を与えてくれる一冊がありました。

「グローバル恐慌 ー 金融暴走時代の果てに」著・浜矩子 岩波新書


2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの倒産をきっかけに「地獄の扉が開かれた」といいます。その後の急速な悪化は、ニュースで伝えられている通りです。著者は、今の経済の状況を「グローバル恐慌」と呼びます。「経済危機」「金融危機」といった生易しいものではなく、「恐れと慌て」が世界に広がっていると見た方が正確だと思われるからです。

この本では、グローバル恐慌の引き金を引いた金融の暴走の源流にまでさかのぼります。それが1971年のニクソン・ショックだというのです。金本位制の放棄から、管理通貨体制に移行し、アメリカ経済のインフレ化が進む。それが金融の自由化→金融の証券化と、コントロールできないレベルにまで金融が一人歩きを進めた過程が描かれます。

この本を読んでいいな、と思うのは、歴史に学ぶ姿勢がしっかりとしていること。迷った時は歴史に学べ、とはよく言われることですよね。「なるほど」と思ったのは、過去の例をみたときに、恐慌は限界に達した経済の歪みを、ある均衡点に戻すための過激な自己浄化作用だとも考えられるということです。それは風邪をひいた時に、体から熱を出して、毒を放出することにも似ているように思えます。そう考えると、ポジティブな気分になれますよね。ただ、10年はかかるのではないかと、著者が示唆してるのが気がかり。

ところが、今のグローバル恐慌は、単純に歴史を学べば解決する話ではありません。これだけの規模での世界同時恐慌は例のないことですし、金融とモノ経済の乖離が進んでいる現状も初めて。そのなかで今後の大きな課題は、グローバル時代における金融の役割をどうするか。金融とモノの経済との関わりをどうするのか、ということだと著者は指摘しています。

いまは、問題がどれだけ深刻なのかがわからない状態ですから、まだまだ先が見えません。それに、目の前の失業をどうするか、モノが売れない現実をどう変えて行くのかもわかりません。そういう意味では、経済全体がある均衡点を探るように、世の中や経済とすりあわせながら、自分なりの原点や均衡点を求めて、踏み出していくしかないのだな、と思いました。

戦後の混乱期をくぐりぬけた人がその後の社会をつくりだしたように、今の苦境をくぐり抜けられる人こそが、その後の安定と繁栄を勝ち取るのでしょう。そのためにも、現状を知らなければいけない。いい勉強になった一冊でした。
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アメリカ社会の底辺で広がる恐るべき実態

2009/03/02
最近、ブログの更新が途絶えているので、このへんで、読書感想をひとつ。新幹線に乗る前に本屋に平積みしていた本をGet。

「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」著・町山智浩 文芸春秋


現代のアメリカ社会の悲惨な実態を知るには絶好の一冊でした。特に、自分を含めて、日本人には縁遠いキリスト教原理主義がわかるようになります。聖書の一句一句を信じようとする生き方で、なんとアメリカ人の3割が信仰しているというのです。ブッシュ前大統領は、彼らの支持を得て当選したと言われています。

キリスト教原理主義の何が危ないって、なにせ反知性、反科学が徹底している。進化論を否定し、人口中絶を否定し、ES細胞を否定する。しかも、その考えを他者に強要するところが悪質です。

さらに、FOXニュースの偏向報道ぶりや、歴然としすぎた格差社会の実態、イラク戦争の裏側で起きていたことなどが、シンプルな文体で書かれています。あっという間に読み終えてしまいます。

これを読んで思ったのは、アメリカは前大統領・ブッシュ政権の8年間ですっかりおかしくなってしまったのかもしれない、ということ。しかも、社会や経済の歪みが、オバマ大統領の力でも、戻せないところまできている感じがします。ただ、そうは言っても、アメリカの知識層の幅広さと奥行きの深さに感銘を受けることは、今後もあるでしょうけど。

グローバリゼーションで、フラット化した経済にあっては、ひとりひとりが切磋琢磨して勉強しつづけ、アウトプットを出し続けなければ、あっという間に社会の底辺に転落してしまう。日本社会もそうなってきていますが、アメリカ社会では、もっと過激で、もっと進んだ形で現れてきてしまっています。これではいずれ社会不安が起きても不思議ではない気がします。ゾッとする気持ちにもなりました。
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容疑者を自供させるテクニック

2008/09/15
最近、いろいろと心理学系の本を読んでますが、ふと思ったのは、捜査官が容疑者に自らの犯行を自供させるというのは、最も高度な心理テクニックを使っているのではないかということ。そう思って読んでみたのが、この一冊です。

「『落とし』の技術」 著・北芝健 双葉社

被疑者として取調室に来れば、自分のその後の人生がかかっているだけに、様々な心理戦が展開されるはず。ドラマのように、ドン!と机を叩いたり、机の上の照明を顔に近づけたりと、高圧的な取り調べや、カツ丼を注文する場面がイメージされますが、実際にはそういうことはないようです。

面白かったのは、第二章の「動作や服装、態度でわかる被疑者の本性」。気になった部分だけで、こんなにたくさんありました。

・視線を右上に向けながら語った話は、嘘の話であることが多い
(視線を右上に動かすことは、左脳で言葉を駆使しようとする働きと関係があるそうです)
・目の力が弱いときは、会話を中断したがったり、捜査官の言い分を拒否する構えを取るとき
・上を向くのは、ウソを考えているとき。横を向くのは完全拒否。下を向けば、捜査官に屈した証拠。
・前傾姿勢は、被疑者が捜査官の話に乗ってきた場合か、挑戦的な姿勢を示したとき。

・取り調べの最中に身振り手振りが大きくなる容疑者は、自己正当化をしようとしている(ウソの供述をしている)
・一方の手で他方の手を握っているときは「防衛」。両手の指を組む時は「防衛」+「願望」。握りこぶしを膝の上に載せている時は「強い意志」を表わす。
・早口で話す被疑者は「不安と事実の隠ぺい」を狙うことが多い。こういうときは、タバコやお茶で「間」をとる
・腹部を抑えながら寝る人は内向的で、一見強がってはいるものの、依存心が強い。大の字で寝る人は自信家。うつぶせで寝ているようなら、かなりの神経質で、欲が強く、自我も強い。横向きになって、足をそろえて寝ていたら、精神の内部に苦悩を抱えていると考えられる。

・グレーの服を好んで着る人は、「一見、同調性があるものの、内実は違う場合が多い」。赤い服は「本当は自信がないが、自己主張が強い」。派手な格好の人は虚栄心が強く、それが進めば「実は借金が多くて首が回っていない」
・スーツを着て、一見れっきとした社会人に見えるが、髭をそっていない人間は、自尊心が強く、人を見下すタイプで、相手への礼儀が希薄。
・水玉模様のネクタイをしている人間は自己顕示欲が強く、ストライプやレジメンタルが好きな人は保守的。無地のネクタイが好きな人は「実は何も考えていない」、あるいは「すごく恐ろしい人」のどちらか。
・安いヒモなしの靴を履く人は「結果を急ぐ」タイプ。犯罪も大雑把。上等なヒモ靴を履く人は慎重で神経質、深謀遠慮型。

・出前で蕎麦を注文し、食事時間が極端に短い人は、ある種の犯罪に手を染めている可能性がある。潜伏先で肉を食べる人は血気盛んで猪突猛進型。
・バーでいきなり日本酒を飲む人はロマンチックな性格の人が多い。ワインを頼む人はマイペースな人。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒を頼む人は論理的で冷徹な考え方をする人が多い。女性なら、最初にビールを頼む人は外向的。カクテルを頼む人は移り気な性格の人が多い。


こういう細かなプロファイリングから、被疑者の性格に合わせた取り調べが行われます。なにせ48時間で自供まで持ち込まなくてはいけないのですから、様々な手法が用いられますが、大きく分けて、自供までには三つのステップがあるようです。
1)話し始めるようになる
2)捜査官に心を開くようになる
3)犯行を自供する

取調室で、いきなり事件の話を聞いても、被疑者が話すはずがありません。様々な関係のない話をしながら、ゆっくりと迫っていくのです。その際に使われるテクニックは...
・話題だけでなく、話し方も被疑者に合わせる
・外見をほめる。性格をほめる。
・被疑者のプライドをくすぐる。故郷自慢をさせる。
・年金・税金問題から、「世の中、不公平だ」と共感してみせる
・女性の捜査では「5K」をしない、というのが基本。5Kとは、暗い・汚い・怖い・固い・臭い。
・甘いものやタバコを出して、安心感を与える

つづいて、「揺さぶり」がかけられます
・世間話の中に、現実の事件の情景を織り交ぜたり、刑務所生活の不安を呼びおこさせたりする
・捜査官と被疑者の関係ができかけたところで、担当者の交代をにおわせてみる
・捜査官と被疑者の「ラポール(rapport)」(=調和の関係)を築き上げる

最後は、「落とし」の技術です。できるだけ短い期間で、なるべく居心地の良い刑務所で過ごしたい、という被疑者の感情を利用します。

「今を逃すと刑が重くなる」
「今、積極的に話せば情状酌量の余地もあるが、今を逃すと『犯情悪質』のレッテルが貼られるぞ」

そのときに大切なのが捜査官と被疑者は対等であるという印象を持たせることです。さもないと、法廷で「自白を強要された」とひっくり返される恐れがあるのだそうです。


これぞ、現場で使われる最強の心理学ですね。これをビジネスの現場に応用できたら、面白いことになりそう。この本によると、日常生活での極意は「相手の尊厳を傷つけないこと」。相手から自発的にしゃべらせるテクニック、なかなかマスターできないと思いますが、試してみる価値は充分にありそうです。
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占いのからくり

2008/09/05
なぜ、占い師の言うことは「当たる」と信じられているのでしょうか。そこには、禁断のテクニックがある、という本を読みました。。

「一瞬で信じこませる話術」 (著・石井裕之 フォレスト出版)

紹介されているのは、コールドリーディングという手法です。ここで使われるコールドとは「準備なしで」「突然に」という意味です。この技術をマスターすれば、現在や過去のことを言い当てることや、未来を予言すると信じさせることができ、ビジネスでもプライベートでも信頼関係をつくることで、人間関係をスムーズにさせることができるというのです。

コールドリーディングが「当たる」とされるのは、人間の深層心理を利用している点です。
・興味があるのは自分自身のことだけ
・意識に強くアピールしたことだけが記憶に残る
・相反する二つの面からその人を判断すれば必ずヒットする
 ある人の親友を描写するには、その人とまったく反対の性格や容姿を描写すればいい
・本当であってほしいという心理

これらの要素をワザ化すると、こういうことになります。

1)人を「Meタイプ/Weタイプ」の2種類に分ける。
 「Meタイプ」は、論理的なスペシャリスト。
 「Weタイプ」は、感性の豊かな社交的な人。

2)それぞれのタイプに合わせた、「読み」(リーディング)を実践します。「ストックスピール」(誰もが体験することをリーディングにしたもの)を覚えた上で、相手にその言葉をかけてみて、反応を確かめます。例えば、「あなたは普通の人よりも愛情深い。でも、ときにはそれが伝わらないばかりか、裏目に出てしまうことがある。あなたは今、人間関係に何らかの問題を抱えていますね?」

確かに、こう言われると、当たっている気がしますよね。カミングアウトしてしまうかも。「普通の人」というところがミソですね。

3)さらに、以下の3種類の「カマをかける」ことで、相手に「この人の言うことは当たる!」と思わせる

「サトルネガティブ」:はったりをヒットさせる仕掛け
「〜ではありませんよね?」「〜には心当たりはないですよね?」

「サトルクエスチョン」:質問していることを悟られずに質問する。誰にでもおこりうるシチュエーションを言った上で「思い当たることはありますか?」と聞く
例:「誰かの言葉にひどく傷ついているようだけど、その場では必死に笑顔でいようとするあなたがいます。思い当たることはありませんか?」

「サトルプレディクション」:未来を予言し、それを的中させたように思わせる技法
例:「近いうちに、しばらく連絡が途絶えた人から急に接触があるはずだ。その人を大切にした方がいい」


これはあざといですね〜。いろいろ応用できそうです。

効果を高めるには、「Meタイプ」「Weタイプ」を的確に見分けること。「ストックスピール」のバリエーションを増やすこと。あとは、臨床例が増えるほどに「サトルプレディクション」の精度が上がっていくでしょう。

もっとも、このコールドリーディングの手法が体系化される前から、人は占いのレトリックにだまされやすいということが証明されています。

1949年、心理学のバートラム・フォーラー教授の実験で、性格診断テストを受けた生徒全員に、以下のような同一の診断結果を送ったところ、86%もの生徒が「当たっている」と回答したというのです。その診断結果とは、
・人から好かれたい、認められたいという欲求が強い
・自分の中にはまだ掘り起こされていない才能が眠っている
・性格に多少の弱点はあるけれども、たいていはそれを埋め合わせることができている
・外向的で愛想がよく、付き合いがいいときがある半面、内向的で用心深く、引きこもってしまうことがある
・ある程度の変化や自由を好み、根拠なしに人の言うことを信じ込んでしまうことはないと自負している
・これまでの人生の選択や行動は正しかったのだろうかと疑問に思うこともある

などなど。

誰にでも当てはまることを言ってみる、というのも、信用を勝ちうる一つの方法なのかと思うと、ヒトの心は、面白い作用をもっているものだなと思いました。
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