口コミの法則・その2

2008/06/29
マーケティング関連の読書は、これで4冊目です。固めて読むと、いろいろと違いがわかって面白い。今回もクチコミマーケティングについての本。

「バズ・マーケティング」 著:マーク・ヒューズ ダイヤモンド社

バズとは、会話の糸口となるものです。この本では、人々の会話にのぼるような方法を駆使して、商品やサービス、人物を売り込むことを類型化しています。

まず、著者は、バズを獲得するには「6つのボタン」を押すことが、話題を提供することにつながると言います。その6つのボタンとは、「タブー」「一風変わったこと」「突飛なこと」「おもしろ、おかしいこと(=笑いをとる)」「ずば抜けている」「秘密」です。

バズが広がるには、マスコミの力も重要だと指摘しています。そこで、著者は番組や紙面で取り上げられるための方法を提示します。
1)弱者が強者を倒す物語
2)一風変わった、突飛な話題
3)物議をかもす話題
4)有名人の話題
5)マスコミですでにホットな話題
これらの要素がミックスしている方が、より取り上げられやすい、というわけです。

さらに商品が注目を集めるには、独創性が必要で、そのための原則を挙げています。「戦略を捨てて、問題を明確にする」「消費者を直接知る」「バットを振り続ける(アイディアを出し続ける)」「競争をしかける」「名称や単語に注目する」「広告ではなくコンテンツをつくる」

その上で、負のクチコミが広がらないように、製品管理をきちんとすることを伝えています。

こうやって、まとめてみると、実にオーソドックスなことを言っているような気がします。商品が注目を集めるために、漠然と広告するよりも、人々の会話のネタになるようなことをしよう、という主旨はとてもうなづけます。

しかし、この本、「テレビ広告時代の終焉」と謳いながら、商品の宣伝のためにテレビを使おうとしているのは、ちょっと虫がいい考えではないかと思うところもあるのでした。
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国宝の茶室・如庵@愛知・犬山

2008/06/28
茶室探訪シリーズ、第三弾は愛知県犬山市にある「如庵」(じょあん)です。日本には国宝の茶室が3棟ありますが、この2週間でそのうちの2棟を見ることができました。立て続けに見れば、その違いも明確にわかるはず。如庵は毎年3月と11月の一般公開以外は原則非公開ですが、今回は伝統未来塾の授業で、数奇屋建築研究の第一人者、中村昌生さんの解説での見学です。

如庵の扁額


如庵は、1618年頃、織田信長の弟、織田有楽(うらく)が京都・建仁寺の塔頭、正伝院に造った茶室です。明治時代に東京・麻布の三井家に移築され、昭和13年には大磯の三井家別荘へ、昭和45年に名古屋鉄道の所有になった後に犬山城下へと転々と移りました。国宝に指定されたのは昭和11年のことです。

如庵の看板


如庵は、犬山城のふもとにある名鉄犬山ホテルの敷地内にあります。名鉄・犬山遊園駅から歩いておよそ10分です。如庵とともに移築された、旧正伝院書院(重要文化財)から入ります。入口の軒が少しだけ唐破風のようになっているところが上品な印象を与えます。
旧正伝院書院


旧正伝院書院の床の間に狩野山雪の障壁画が残っていました。
旧正伝院書院2


いよいよ如庵です。もちろん撮影禁止なので、写真は外観のみです。
如庵外観1


茶室の内部は二畳半台目。お茶を点てる畳が台目畳。客間は実質2畳です。床柱は「杣(そま)なぐり」といって、自然で素朴で力強い印象を与えます。なぜか同じような形を真似ても、あの迫力が出ないそうです。歴史がそうさせているのでしょうか。床柱とは対照的なのが、床の間の框。黒漆でがっつりと塗り固められて、フォーマルな印象を与えます。床の間の落としがけの木は、人間の眉のように、真ん中が厚く、両脇が薄く削られています。

如庵をユニークな茶室としているのは、その空間構成にあります。
1)床の間の脇に斜めに走る壁と足下の「鱗板」
 お菓子やお茶を運ぶ人の通路が確保するための空間ですが、それまで四角い空間しかなかった茶室の設計にとっては、斬新な発想で中村先生も大絶賛の創造性です。点前座の前に中柱、風炉先の板が天井から下りているのも大胆です。

2)有楽窓
 お茶を点てる「点前座」の奥には、竹を詰め打ちにした「有楽窓」があって、竹の隙間から細い光と風が流れます。障子を締めると、竹の細いシルエットが映るのも素晴らしい! 全体的に待庵と比べると窓が多く、部屋全体が明るく、開放的な感じがします。

3)腰張りに暦
 茶室の壁は、足下から膝の高さくらいまで「腰張り」という紙を貼ります。紺や白の無地の紙が使われるのが普通ですが、ここでは昔ながらの暦が書かれています。字が細いので、一瞬「ん?何が書いてあるんだ?」と思ってしまいましたが...

如庵内部のご案内


待庵のあとに、如庵を観ると、待庵のストイックで端正な魅力と、如庵の自由で伸びやかな雰囲気の対比がよくわかります。創造性といっても、先週の佐川美術館とは異なるベクトルを感じました。

中村先生は「織田有楽は、武人としての名声を得ることはできなかったが、文化人としての才能を発揮して、後世に素晴らしい財産を残した」と締めくくっていました。確かにそのとおり。千利休は「茶の湯は習いのなきを極意とす」という教えを残しているそうですが、それを織田有楽は見事に良い方向に解釈して、創造性のある空間を造りました。もっと自由に茶の湯が楽しんでいいんだよというメッセージだと思います。(そうだそうだ!)

有楽好み井筒(佐女牛井)

有楽好み井筒(佐女牛井)
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口コミの法則・その1

2008/06/27
マーケティング関連の本ばかり、なぜか固めて読んでます。自分にとって親しみやすいジャンルなのかもしれません。この日は「ティッピング・ポイント」について。

「急に売れ始めるにはワケがある」 著・マルコム・グラッドウェル ソフトバンク文庫

この本の原題は「The Tipping Point」。ティッピング・ポイントとは「あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のこと」です。この本では、流行現象を「口コミによる感染」ととらえて、そのメカニズムを説きあかします。

ティッピング・ポイントの要因として指摘されているのは、以下の三つです。
1)少数者の法則
 社会に広いつながりをもつ「コネクター」、自分の知っている情報を他人に教えることで満足する「事情通」(メイヴン)、説得する技術をもった「セールスマン」から情報が流れていくこと。

2)粘りの要素
 翻訳では「粘り」と表現してますが、消費者にとっては「刺さる」「ひっかかる」と表現した方が的確なような気がします。消費者の心に残る(粘る)演出、情報の出し方が大切だと指摘しています。

3)背景の力
 ここではニューヨークの治安が急激に改善したことを例に、社会的背景を形成するような小さな問題を解決することが大きな問題の解決につながることを力説しています。ニューヨークの場合、地下鉄の落書きと無賃乗車をなくすことが、大きく作用したと説明しています。つまり、市場環境が変わったと思わせる象徴的な小さなことを変えることが大切だといいます。

先日読んだ「キャズム」と同じように、この本では市場を「イノベーター」「初期採用者」「初期多数派」「後期多数派」「出遅れ」の5段階に分けていて、ヒットが成立するには3番目の「初期多数派」の納得が得られることが必要だと説明しています。2番目と3番目の間の溝を飛び越えるのは、口コミ。中でも上記の3つの要因が、多数派を納得させるために必要だということです。

「少しの力で爆発的な感染力」とはいうものの、どこに集中すればいいか、わかるならいいんですけどね。その見極めが大切だと思いました。
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「出世」は、どのようにして進むの?

2008/06/26
サラリーマンとして知りたいことのひとつは、出世にはどのようなメカニズムが働くのか、ということ。同じ企業で働き続けるかぎり、そのからくりを知っていれば、立ち回り方が変わってきますよね。

『「出世」のメカニズム』 著・日置弘一郎 講談社選書メチエ

タイトルを見る限り、この本は、その疑問にまっすぐに答えてくれそうな感じがします。ところが、実際には<ジフの法則>を、企業社会における出世の仕組みにあてはめてみようとして、書かれた考察の数々です。

<ジフの法則>とは「出現頻度がn番目の単語は、出現頻度が一番目の単語のn分の1の確率で現れる」ということ。確率分布の法則です。

企業内で顕在化した能力の分布は、このジフの法則で現れる分布と同じだと主張するのです。そのうえで、顕在化した能力は、さらにフィードバックを受ける(能力が磨かれる)ことで、会社に貢献し、出世につながる、というわけです。格差社会の成立に置き換えれば、一度「勝ち組」に入ると、お金や情報の流れが良くなるために、さらに勝ち続けることができる、というわけです。

問題は、何をきっかけにどういうジフ構造ができるかわからないこと。そうして出来上がった構造が一度確定すると、序列を崩すのが難しいということ。となると、どうすればその序列を壊すことができるのか。そこまでの説明はありませんでした。そうやって考えると、格差社会にハマってしまった人間が抜け出すのは大変だということがよくわかります。

「出世」というテーマに戻して言えば、人事異動や転職のタイミングで、出来上がった構造を崩し、自分が発揮できる能力を出せる組織に移らないと、サラリーマンにとって能力を披露する場面がなくなってしまいます。

面白いと思ったのは、カーネギーの「自信を持てば成功する」というタイプの啓蒙書が、集団内でジフ構造が成立しないときだけに有効、という説明。いま、成功のための勉強本が数多く出されています(自分もたまに読みます)が、日本の企業社会で成立させるには、それなりのアレンジが必要そうなことが想像できます。

結局は、仮説をあてはめようとした話なので、サラリーマンにとっては、ちょっと難しい内容。会社の人事よりも、他の事例の方が面白くあてはめられそうです。例えば、お笑い芸人の出演回数は、ジフの法則によって説明できそうだし、巨人の大型補強がうまくいかない理由も説明できそうな気がします。
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これぞ大阪名物!@道頓堀・くいだおれ

2008/06/25
あまりにも有名な大阪名物「くいだおれ人形」。携帯電話やデジカメにその姿をおさめる人の姿が後を絶ちません。が、「くいだおれで食べたことのある人」は、少なくとも自分の周りにはいません。そこで、7月8日の閉店を前に(直前1週間はおそらく込み合うことが予想されるので、このタイミングで)、一度食べてみることにしました。

くいだおれ太郎


くいだおれは、大阪・道頓堀にある複合料理ビルで、同じ建物の中に割烹・和定食・居酒屋・洋風レストランが入っています。戦後の復興期(昭和24年)に創業した、大阪でも歴史のある食堂ですが、中でも洋風レストランは日本初のファミリーレストランとして知られます。メニューも「くいだおれセット」や「くいだおれ太郎パフェ」など、他に比べてオリジナリティを感じる内容。そこで、今回は洋風レストランでオリジナルメニューにいくつか挑戦します。

くいだおれ人形前のカメラの放列を横目に店内に入ると、ファミリーレストランらしい空間が広がります。入店時は満席でしたが、回転率が高いのか、5分と待たずに席につくことができました。

今回、食べてみようと思ったメニューは「くいだおれ太郎パフェ」「プチ太郎アイス」「たこ焼き風シューアイス」。ところが、お店のショーウインドーには、そのうちの前者2つに「売り切れました」の紙が貼られていました。これはメニュー。

くいだおれのデザートメニュー


「残念!」と思いながらも、お店の人に聞いてみたら、「ありますよ!」と快い返事をいただきました。いやー、聞いてみるもんですね。友人と3人でこの3品を食べ分けてみました。このコテコテのデザインがいいですね。

「くいだおれ次郎パフェ」
くいだおれ次郎パフェ


「プチ楽太郎サンデー」
プチ楽太郎サンデー


「たこ焼きシューアイス」
たこやきシューアイス


食べてみると、パフェは底の部分のシロップが、くだもの缶のシロップの味によく似ています。生クリームもかなり甘め。太郎のメガネもチョコレートでできていました。全体的には、昭和のスイーツの甘ったるい感じです。それが懐かしい感じでした。最も現代的な味だったのは、たこ焼きシューアイス。皮の内側のアイスがひんやりとして美味しかったです。

あっという間に平らげて、お会計。ファミリーレストランのようにシステマティックながら、どこか大阪のコテコテなノリが残っているところが、面白かったです。

「支店を出すな」「家族で経営せよ」「看板人形を大事にせよ」との創業者の遺言を守ってきた「くいだおれ」が60周年を迎えると同時に幕を引くというのは、時代の流れとはいえ、残念なような気がします。やはり写真を撮るだけじゃなくて、あの人形が好きなら、実際に食べに行かないと!大阪の人たちの、味と価格に対する厳しさの一端が出た幕引きだったのかもしれません。

くいだおれのスイーツたち

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