最先端技術に感動:SPring-8一般公開

2009/04/26
先日の和歌山毒物カレー事件の最高裁判決で、決定的な証拠となったヒ素の成分分析。それを可能にしたのが、大型放射光施設・SPring-8(スプリング・エイト)での実験でした。このSPring-8、世界最先端の研究ができるというのですが、いったいどういう施設なのか、そこで何がわかるのか、文系の自分には全く想像がつきません。年にたった一日だけ行われる一般公開がこの日にあたるということで、その一端を見に行くことにしました。この一般公開、今年で17回目を迎えるということです。

SPring-8外観


SPring-8は、兵庫県佐用郡にあります。大阪から新快速でおよそ1時間半で、JR山陽線・相生駅に着き、さらに路線バスで40分あまり。かなり遠いところです。路線バスは1時間に1本しか出ていないので、それに合わせて向かいました。

SPring-8敷地内


バスは心細くなるほどに人里離れた山を進みますが、やがて人工的に整備された団地やキャンパスにたどり着きます。SPring-8は、そのバス路線の終点です。普段はその手前のゲートで下車して、名前を記入して、許可をもらわないと立ち入れないそうですが、この日は一般公開なので、部外者でも施設のすぐ近くまで直接バスに乗って行くことができました。

入口で住所と氏名を記入して、緑色のパスを首から下げます。これが一般見学者の証しとなります。順路に沿って、まず向かったのはメインの調整室。大きなモニターが輪になって連なっています。表示されるのは、英語で、しかも技術用語なので、チンプンカンプンです。ここで、SPring-8の概要説明を聞きました。大きなドーナツ状の施設で、電子を高速度で動かすことで生じる強いX線を、様々な物質に照射することで、今まで見えなかったものが見えてくる、というのです。

概要はわかりましたが、技術の中身はわからないまま、1フロアおりると、様々な実験の紹介コーナーに着きました。1周1.5kmもの長い施設のうち、そのコーナーは300mほどの長さがありました。ここではSPring-8での実験でわかることや、それぞれの大学や企業が研究していることが展示されていました。
SPring-8実験事例紹介コーナー


例えば、水素エネルギーの研究では、このようにラジコンのような大きさの水素自動車が走っていました。
水素で走るミニカー


さらに、歳をとると髪の毛のつやがなくなり、縮れてくる理由に着いて、花王とP&Gが研究内容と、それを反映させた商品を展示していました。髪の毛の中心には、バネとなるような成分があって、加齢とともに固くなって、それが髪の毛の縮れにつながるのがわかった、ということでした。ふむふむ。

このほかにも、リチウムイオン電池の寿命が短くなる理由であったりとか、スタッドレスタイヤが凍結した路面に食い込む仕組みとか、各地で発見される青銅器の成分が3種類に分けられるとか、様々な研究が行われていることがわかります。

このSPring-8は実験施設で、施設で働く人は、およそ300人。この施設で実験することを申請して、それが認められると、各大学や企業から、実験にやってくるわけですが、その実験が年間およそ500件。実験にやってくる人x回数分の訪問者があるというわけです。ふむふむふむ。

さらに降りると、大型加速器の内側に入ることができました。普段は厚さ1mのコンクリートに閉ざされた空間です。
加速器内部1


円の内側に電子が流れる管が、外側にX線(放射光)が流れる管があります。
加速器内部2


管の断面はこうなってるそうです。
加速器内部3


その管を囲うかのように、様々な機械がとりつけられていました。強力な磁石もあります。
加速器内部4


加速器内部5


今年から公開されることになった、X線自由電子レーザー施設。次世代の放射光実験施設として期待されていますが、2010年度の完成を目指しているということです。
X線自由電子レーザー施設


午後1時40分に着いて、閉館ギリギリの16時30分まで、あっという間でした。なにせ広さは141ヘクタール、甲子園球場のおよそ36倍、東京ドームのおよそ30倍もあるのです。もっと早く来れば、もっといろんなものが見られたのに、最後は駆け足になってしまいました。ちょっと残念。

ふだん触れることのない、理系ワールドでしたが、とてもいい刺激になりました。普段は地味で無機質な空間と思われるところを、わかりやすく楽しく見学できるように、様々な工夫がされていました。

会場で案内をする人たちに、いかがわしい営業マンや政治家っぽい人は少なく、実直そうな人がたくさんいたことにホッとしました。理系の世界の魅力を知るに良い機会でした。難しい最先端技術をわかりやすく世の中に広めるということが、理系離れを食い止める、最も良い方法ではないかと感じました。
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六斎念仏踊り@京都・吉祥院

2009/04/25
毎年4月25日と8月25日、京都・吉祥院天満宮で、六斎念仏(ろくさいねんぶつ)踊りが披露されます。六斎念仏とは、鉦や太鼓ではやし、念仏を唱えながら踊る民俗芸能で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。歴史ある念仏踊りが、どういうものなのか、実際に行ってみることにしました。
吉祥院六斎念仏1


仏教では毎月8・14・15・23・29・晦日を六斎日と呼び、この日は悪鬼が現れて人を惑わす日として、正午からは食事を取らないで事を慎むべきだとされます。六斎念仏踊りは、平安時代に空也上人が、仏教を広めるために踊った念仏踊りが起源だと言われています。25日に開催されるのは、この日が天神さんの日だからでしょう。

京都・吉祥院天満宮は、JR京都線西大路駅から南へ15分ほど歩いたところにあります。雨上がりの境内は少しぬかるんでいました。

開始時間は、午後8時。太鼓の合図とともに、六斎念仏踊りが始まります。まずは、浴衣姿の男たちが太鼓を持ち上げながらたたきます。
吉祥院六斎念仏2


続いて、子供たちによる「四ツ太鼓」。小さい子から順にたたいていきます。叩き方に特徴があって、ドン・ドン・ドドドンというのがメインのリズムになっているように聞こえました。年長の子になると、テンポが一気に上がります。
吉祥院六斎念仏3


子供による演奏、続いては、2人が向き合ってたたきます。これまた、年長の子になると、テンポが上がりました。
吉祥院六斎念仏4


続いては、獅子舞の奉納。緑の獅子が活発に動きます。
吉祥院六斎念仏5


再び、浴衣姿の男たちによる、太鼓演奏。今度は舞台を大きく使って、アクションも大きくなりました。
吉祥院六斎念仏6


獅子舞は胴体が朱色になり、顔も姿も大きくなりました。
吉祥院六斎念仏7


獅子舞のアクションも大きくなりました。何度も倒立したりして、結構動きが激しいのです。
吉祥院六斎念仏8


クライマックスは土蜘蛛(つちぐも)と獅子。歌舞伎のような派手なアクションです。
吉祥院六斎念仏9


終了時間は、午後9時15分頃でした。「六斎念仏」と言うけれど、念仏がほとんど聞こえてこなかったのが、ちょっと残念でした。

後で調べてみると、六斎念仏にもが様々なバリエーションがあって、10数団体が公演をしているのだそうです。吉祥院は、能や歌舞伎の要素が入った「芸能系」というカテゴリーに分けられるそうです。素朴ながらも、最後には見せ場もあって、面白く観ることができました。
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水口曳山祭・宵宮@滋賀・甲賀市

2009/04/19
滋賀県甲賀市に、祇園祭とよく似た、大きな曳山が登場するお祭りが、春に行われているという情報を聞いて、行ってみることにしました。

そのお祭りとは水口(みなくち)曳山祭。水口は東海道53次の50番目の宿場町として江戸時代に栄えましたが、その中期、享保年間に、町民の力によって生み出されました。かつては30基あまりが活躍したということですが、今年登場したのは16基です。


祭りの最寄駅は、近江鉄道・水口城南駅。JR草津線の貴生川から乗り換えて1駅です。祭りのタイムスケジュールがわからないなか、宵宮なのでと午後6時に着くと、駅の近くの露店は地元の家族連れで賑わっていました。
水口曳山祭1


その近くに、曳山を収める倉庫があり、そのうちの3カ所で、倉庫前に曳山を出して、笛と太鼓と鉦による演奏が行われていました。祇園祭に比べると、圧倒的にテンポが速いのが特徴です。水口囃子と呼ばれるそうです。
水口曳山祭2


さらに歩くと、お祭りの中心地、水口神社がありました。落ち着いた佇まいの神社です。
水口神社境内


境内では地元のお酒「笑四季」がふるまわれていました。口あたりがよく、おいしいお酒でした。さらに奥ではお抹茶もいただけます。
水口神社境内でふるまい酒


午後6時25分ごろ、一台の曳山が境内に引かれてきました。曳山の大きさは、幅3.4m、高さ5.7m、奥行4.8m。ハイエースよりも大きく、迫力があります。
水口曳山祭:大池町の曳山


このあと何かイベントがあるかというと、そうでもなさそう。ということで、付近に点在する曳山巡りをすることにしました。観光協会主催でスタンプラリーをやってましたが、それには参加しませんでした。曳山のある各地区では、祇園祭の宵山と同じように、倉庫の前に曳山を出して、そこで演奏をしていました。
水口囃子1


水口囃子2


それぞれの曳山の置かれた場所が結構離れていて、16台すべてを見ることはできませんでした。ただ、それぞれの曳山の特徴が違ったり、参加者の年齢構成やらチームワークによって、テンポの速さ、ハーモニー、音の強弱など、地区ごとに演奏内容に違いが出たりしていました。
水口囃子3


全体を見てみると、水口祭の宵宮と、祇園祭の宵山は、よく似ていることがわかりました。夜の街で幻想的に光る提灯、特徴のあるお囃子、そして大きな曳山。翌日の例大祭に行けないのが残念でした。
水口曳山祭3


このお祭りに直接関係することではありませんが、こういう曳山(山鉾と読んだり、屋台と読んだりするところもありますが)が登場するお祭りは西日本がほとんどで、愛知県から東にはあまり見られません。それがなぜなのか、不思議になってきました。
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桜の通り抜け@大阪造幣局

2009/04/19
大阪の春の風物詩、造幣局の「桜の通り抜け」。全長560mの通路に並ぶ、およそ120種類・350本の桜並木を愛でる行事です。普段、造幣局は立入禁止ですが、4月中旬の一週間だけ、入ることができるのです。大半が遅咲きの八重桜で、お花見シーズンを締めくくる頃に行われます。今年は暖かくなるのが早く、花見気分が抜けそうなタイミングでの開催です。例年は大変な混雑ぶりですが、どうなっているのか、ちょっと寄って見ることにしました。

最寄駅のJR東西線、大阪城北詰駅から徒歩15分ほどで、到着します。駅の出口からすでに人の流れができているので、それについていけば大丈夫です。

会場に着くと、この人込み!
桜の通り抜け2009・1


暖かさで、遅咲きの桜でも、葉桜になってしまってます。これは「今年の桜」とされた、平野撫子(ひらのなでしこ)という種類です。
桜の通り抜け2009・2


桜の通り抜けでは、様々な種類の桜が並ぶため、ダイナミックな美しさというよりも、個別の美しさの特徴や違いをかみしめるように見るのがいいのではないかと思います。桜の通り抜けは宴会NG。文字通り、立ち止まらず通り抜けるように激しくアナウンスされます。

この日、ところどころで見つかった、美しい桜はこちら。
桜の通り抜け2009・3


桜の通り抜け2009・4


桜の通り抜け2009・5


でも、満開を迎えた桜は少なく、訪れる人は例年通りものすごく多く、その期待値と実態とのギャップが激しい、今年の通り抜けでした。あと、この日の最高気温は25度を越える夏日ということもあって、暑さと日差しの強さが印象に残りました。
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超プラチナ!第25回こんぴら歌舞伎を観た!

2009/04/18
香川県琴平市、金毘羅宮のふもとに、日本最古の本格的芝居小屋が残されています。日本最古と言っても1835年に建てられたものですが、江戸時代の芝居小屋をそのままに伝えるつくりで、国の重要文化財に指定されています。この芝居小屋(金毘羅大芝居=金丸座)では、1985年以来、「四国こんぴら歌舞伎大芝居」として、毎年、歌舞伎界を代表する役者による公演が行われてきました。今年は25回目の節目の年とあって、初回の公演の実現に尽力したという、中村勘三郎が出演します。

そのため、チケットの人気はなんと例年の5倍、1枚に対して、およそ40倍の希望が殺到するというプラチナチケットになりました。その貴重なチケットを手に入れることができたため、大阪から日帰りで行くことにしました。一日2公演の、午後の部。開演時間は午後3時40分でした。

金丸座は、金毘羅宮の石段を少し上り始めたあと、左手に進む道を登って行った先にあります。会場前には、このような大きな看板というか、横断幕というか...

金毘羅大芝居の横断幕


坂を上り、会場に入ると、役者の幟がはためいていました。背景の緑が、とてもいいですね。
金毘羅大芝居:役者の幟


金丸座の正面。東京の歌舞伎座や京都の南座に比べると、かなり小さいのですが、この木造建築がいい味を出しています。
金毘羅大芝居:金丸座正面


役者の看板。「村」の字がユニークです。
金毘羅大芝居:金丸座正面の役者看板


入口の前には、お土産や、飲食、それに記念切手販売のテントが並んでいました。劇場内には売店やトイレがないので、休憩時間には皆、劇場から出てきました。

さて、いよいよ金丸座の中へ入りました。靴を脱いで、渡されたビニール袋に入れます。気になる金丸座の内側は、こうなっています。まずは舞台と花道。
金毘羅大芝居:金丸座舞台


天井。
金毘羅大芝居:金丸座天井


上手(かみて)側の側面。
金毘羅大芝居:金丸座側面


午後の部の演目は、2つでした。
1)沼津:「伊賀越道中双六」全十段のうちの第六段。東海道を旅する呉服屋十兵衛が、荷物運びの老人・平作と出会うが、実は二人が親子で、しかも運命の巡り合わせで、仇討ちの敵味方に分かれているという、韓流ドラマ並みのダイナミックな偶然盛りだくさんの設定でした。先代勘三郎が、第三回金毘羅大芝居で演じた演目です。
金毘羅大芝居:沼津


2)闇梅(やみのうめ)百物語:百種の怪談を集まって物語る「百物語」の会を題材とした舞踊。のっぺらぼうが出て来たり、一本足の踊りや、暗闇に浮かぶ骸骨が踊り出すなど、ビジュアルに訴えて、しかもバリエーション豊かでコミカル。舞台装置も活かした演出で、見た目に楽しい演目でした。
金毘羅大芝居:闇梅百物語


休憩は一回、およそ30分。午後7時に終了しました。あっという間に終わってしまいましたが、面白く堪能させていただきました。

演劇に詳しい訳ではありませんが、勘三郎の実力を実感した舞台でした。会場の注目を一身に集めて、ひとつのアクションで笑わせたり泣かせたり驚かせたりできる。しかも、それが実に無理がないのです。前半はそれが際立っていました。

金丸座の印象ですが、とにかく役者と客の距離がものすごく近いです。花道では、役者の衣装が客に触れそうになっていました。役者の息づかいが目の前に伝わってきます。逆に客席も緊張して観るようになります。でも、枡席で、背中がよりかかれない客には、辛い姿勢で見続けなければいけないので、確かに正味3時間が限界なのかもしれません。自分は寄りかかる場所があって、比較的楽ちんでしたが、それでも少し足が痛くなりました。

でも、こういう江戸時代の古い芝居小屋を再生して、そこで一流の役者が必ず来て年に一度公演をする、というのはとても素晴らしいプロジェクトだと思いました。スペースは狭いので、経済効率としては良くないかもしれませんが、文化事業としての魅力、意義を訴えるには最高のイベントでした。

最後に、これはお土産として配られた団扇と通行証です。
金毘羅大芝居:お土産
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