本州最南端・串本日帰りの旅

2008/03/15
本州最南端の町、和歌山県串本市は、大阪から特急で3時間もかかります。沿岸沿いをくねくねと走らざるを得ない紀伊半島の地形のせいで、日帰りをするには何とも遠いのです。でも、この町には、国の重要文化財に指定された長沢蘆雪のダイナミックな襖絵があって、ぜひ一度現地で見てみたいと思っていました。それに、春を感じるなら、関西で最も温暖な場所にいきたいと思い、季節の変わり目、しかも天気予報は完璧な晴れ予報のこの日、急遽行くことにしました。

串本の海岸

ちょっと寝坊してしまって、天王寺午前10時20分発の「くろしお」に乗車しました。串本に着くのは13時22分。出るのが遅かったと、ちょっと後悔。

まずは昼ご飯。駅前の食堂で、地元の人がよく食べるという「かつお茶漬」をいただきました。串本では一年を通して鰹が獲れるのだそうで、漁師たちが海に出る前にご飯に載せて、そこにお茶をかけていただくのだそうです。ちなみに、お店でいただいたものは、特製のたれがかかっていました。それほど見栄えのいいものではありませんでしたが、コクがあって、かつおは素材の良さを感じさせるまろやかさ。ぶりしゃぶのような食感でした。

駅に戻ってレンタサイクル。4時間で600円と手頃な価格です。駅員室から自転車が出てきたのには少し驚きました。

さっそく、今回の旅の目的地、無量寺へ。自転車だとあっという間に着きます。入口にソテツがドンと生えていて、南国情緒を感じます。

無量寺@串本

門をくぐって右手に、小さな美術館「応挙芦雪館」があります。1961年11月に開館した当初は、「日本一小さい美術館」として知られたのだそうです。確かにこぢんまりとしていますが、中身はギュッと詰まっていました。入館料1000円を払って中に入ると、伊藤若冲や円山応挙の掛け軸がトントンと並べられていました。杉板の襖の両面にかすかに残された絵も展示されていました。

なぜ串本にこのような名画が残されているのでしょうか。津波で流された無量寺が再建されたとき(1786年)の住職・愚海和尚と円山応挙が、京都で仲良しだったのがきっかけです。応挙は新築祝いに本堂を飾る12面の障壁画などを寄贈しました。弟子の長沢芦雪は、本堂の有名な襖絵「竜虎図」12面などを描きました。当時、芦雪は32〜33歳で、1年足らずの間に、串本のお寺や旧家などにおよそ270点の作品を残したのだそうです。こうして、江戸期を代表するような画家二人のコレクションが、ここに集められているのです。

さて、応挙芦雪館の中央にはレプリカの虎図が置かれています。かつて虎図が大英博物館に貸し出されたときに、その代わりとして作られたものです。

つづいて、平成2年に建てられた収蔵庫に移動します。ここに、国の重要文化財に指定された、長沢芦雪の「竜虎図」の襖絵の本物があります。収蔵庫は、晴れた日にしか開かれないのだそうです。串本の激しい雨にあたると、襖絵はあっという間に劣化してしまうからです。それぞれの絵の一部は、こちら。

長沢芦雪の竜虎図@無量寺

何と言っても印象深いのが、虎図。当時は毛皮を見て、想像で描かれた動物です。どこかキュートな顔に、襖3面いっぱいに手足がスッと伸びています。すごい迫力です。虎の目は、どこから見ても、こちらを見ているように感じられます。伊藤若冲のコレクションで知られるジョー・プライス氏は、この虎図を見て、感動の余りしばらく動かなかったそうです。やがて絵が描かれた当時と同じように、周囲の照明を消して、ろうそくの明かりで鑑賞し続けたそうです。プライス氏だけでなく、東京から来て3日間ずっと、この絵を鑑賞しつづけた女性もいたということです。自分もずっと一人で虎図、竜図、唐子琴棋書画図などを独占することができました。これが東京や京都の展覧会だと、絶対にこうはいきません。贅沢なひとときでした。

続いて向かったのは、串本海中公園。無量寺からおよそ5km離れていました。海沿いを走って、かなり気持ち良かったのですが、自転車で行くと少し遠く感じました。

串本の海1

ここでは、串本近辺のサンゴや、ウミガメ、サメ、ヒトデなどを見ることができます。
串本海中公園2

串本海中公園3

中でもユニークなのは、サメやエイ、ウミガメが悠々と泳ぐところを見られる水中トンネルです。まるでダイビングしながら見ているような感覚でした。
水中トンネル@串本

沖合140m、水深6.3mに設置された海中展望塔。
海中展望塔@串本

海中展望塔の下@串本

丸い窓を覗き込むと、メジナの群れを目の前に見ることができます。
メジナの群れ@串本

閉館(16時30分)間際に駆け込んだため、「ステラマリス」という海中観光船に乗ることはできず、あまりゆっくりと鑑賞することはできませんでしたが、ダイビングができなくても、気軽に水中体験ができて、串本の多様な海の生物を目の当たりにすることができていいな、と思いました。

串本海中公園

串本から大阪に戻る最終の特急は18時46分。それまで2時間近くあったので、「せっかく本州最南端に来たのだから」と10km離れた潮岬を目指すことにしました。これが大誤算!かなりの上り坂を進まなければならず、苦労しました。潮岬の灯台に着くまで、およそ50分。ああ、これならレンタカーを借りればよかったかも。

潮岬灯台

着いたのは17時30分頃。すでに灯台は閉門して、最南端から海を眺めることはできませんでした。代わりに、潮御崎神社にあいさつしました。

潮御崎神社

そろそろ戻らなければ、と焦って、串本駅へ。うかつなことに「本州最南端の地」の看板を見ることなく、あの辛かった坂を一気に下りてしまいました。下り坂は時間がかからないので、寄ってからでも充分間に合いました。これには後悔したなあ...

潮岬からの眺め

最終の特急「オーシャンアロー36号」で、天王寺には21時30分頃に着きました。めまぐるしい日帰りの旅でしたが、美術あり、水中体験あり、ハードなサイクリングありと、充実した旅でした。
串本の夕日




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Comment
○ 虎図・・・
うーん、写真だけでも続々するというか、ぐいっと胸に訴えてきますね…



京都とか、日本の古い物、歴史のある物が恋しいこのごろです(後食事と家族友人お知り合いの方々)…イギリスから一時帰国した際には必ず行きます!



一生、定期的にそういうものを見に戻ってくる気がします(笑)



アイデンティティは私にとっては自分で選び創り上げるものですが、日本の伝統的な美意識、果てしなく深い精神が理解できる立場にいることを本当に感謝してますし、日本に生まれてよかったと思います。



○ Re:虎図・・・(03/15)
コメントありがとうございます。

イギリス在住ですと、日本の繊細な文化が恋しくなるでしょうね。

歴史と文化を知るなら、西日本は面白いですよ!

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